お酒の詩[2005/09/14・Vol.08 カブト・ビール]




赤レンガの建物と黒いビール...

 カブト・ビール? さて、皆さんご存じでしょうか? いわゆる小瓶である。色はかなり黒いが、黒ビールではない。ある意味今となっては、幻のビールである。今は閉鎖されているこの赤レンガの建物が旧ビール工場なのである。この赤レンガ建物は、第2次大戦の機銃掃射痕もある明治に建てられた古い物だ。普段は中に入ることはできないが、月に2度ほど公開されている。僕が訪れたときは、残念ながらその日ではなかったが。
 この旧カブト・ビール工場は、愛知県の知多半島の中程、半田市にある。名古屋から名鉄の特急で約30分。駅を降りて、歩くこと10分ちょっとだろうか。それほど遠くはない。この半田では、昔から酢や酒や醤油の醸造が盛んだったらしい。港や運河もあり交通の便も良かったのだろう。また、大阪や東京にも海運での輸送ができたのである。その当時、既に大きなビール会社が出来上がっていたが、半田の先人たちが財力・技術力・心意気で立ち向かったのである。そして、明治22年に半田からカブト・ビール3,000本が初出荷されたのだそうだ。今は復刻版が少量生産されているようだが、なかなか手には入る物ではない。なんだか、遠い明治に心を馳せ飲み干したビールのほろ苦さは...
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