お散歩[2006/02/12・Vol.12 御苑で絵本]




海女の愛は、竜王おも凌ぐ...

 佐藤美術館を知ったのは、日経の朝刊であった。最終ページの右上に、ARTに関連した続き物がある。ある日、画像右にある『竜王の珠』について書かれていた。写真はモノクロであったが、何故かこの絵に惹かれた。たくましい竜の身体に小さな顔。何か珠のようなものを持っている。神秘的な物語が思い起こされる。そして、これは絵本の挿し絵だという。どこで見ることが出来るのだろう? 新宿大京町? 聞いたことがない。さっそく地図で調べると、信濃町の慶応病院の坂を降った当たり。そのうち行ってみようと思ったのであった。
 それから、2〜3週間たって、昨日訪れた。降りたのは、JR総武線の千駄ヶ谷。新宿御苑の脇を通り、T字路の交差点を曲がってすぐ。迷うことはない場所だ。1階は駐車場と小さなエントランス。エレベータホールと言うべきか。チケットを買って、まずは3Fへ。この階では、絵本『竜王の珠』の原画が展示されている。
 物語は奈良時代。藤原不比等が若いとき、盗まれた家宝の珠を取り返すべく讃岐に渡った。ここで、海女と愛し合い男の子を授かる。海女に讃岐に来た訳を語ると、「あなたのお役に立てるのは、わたくししかおりません」と珠を取り返しに潜るのであった。8人の竜王の隙を見て取り返すのだが、追われ、捕らえられそうになる海女。彼女は、自分の乳房の下を掻き切り、珠を隠す。竜王は人の血を嫌うのだ。海女は命を懸けて、「面向不背の珠」を取り戻したのだ。そして、不比等に我が子を育ててくれることを託す。その子房前が13になったとき、この話を不比等から聞き、母を訪ねて讃岐へ渡るのだ。母は子供に合いたさに幽霊となって現れる。そして、珠と竜王の話を聞かせ去っていくのだ。この後、房前は母の弔いをし、小さな墓を建てる。
 ストーリーはこのようなお話である。元は『能』のお話だ。作者は、シテ方観世流能楽師の片山清司。絵は岡村桂三郎が描く。心が澄み渡るようであり、もの悲しくもあり、母の愛、男女の愛。思わず、『能』を見たくなりました。
 さて、佐藤美術館を後に新宿御苑へ向かう。ほんのすぐ先が正門なのだが、今は閉鎖中だ。四谷三丁目をぐるっと回り大木戸門から入園する。大木戸門は甲州街道が新宿通と別れるところ。江戸時代の起点だね。だから、大きな木戸があった。今日は建国記念日。だが、特別何かをしているわけではない。のんびりと子供連れ、恋人の二人連れ。ゆっくりと歩いてみる。人が多くないのがいいね。よく手入れされた芝生はとても気持ちがいい。おぉ、と思ったのはプラタナスの並木。今は葉が落ちて、枝が何とも奇妙な絵画のようだ。それから池を回り、日本庭園の方へ。この御苑は桜の名所で、その時期は沢山の人で賑わうのだろう。こんな冬の時期は、ボケっとしたり、絵を描いたり、写真を撮ったり、のんびりするにはいい場所なのだ。
 新宿口から出ると、画材店の世界堂がすぐ近く。ここからは歩行者天国である。新宿駅に近づくに従って人が多くなり、路上でものを売っている人も多くなる。さっきまでの、のんびりとした雰囲気とは全く異なり、人々の喧噪の間をすり抜けて歩く。新宿は久しぶりだなぁ...
 鶴川駅に戻ったのは17時であった。先日行った焼鳥屋へ行ってみる。残念ながら、トリハツはなし。しかし、馬刺はなかなかのものでありました。タンとカシラは塩で、レバーはタレで。まず浦霞を1合、続いて一の蔵を1合。しらすおろしとうずらベーコン巻きを追加して、黒糖焼酎に切り替える。ここの焼酎ロックはかなり量がある。いい気分になってタクシーで帰ってきました。が、まだ19時。しかし、mixiを書いて眠ってしまいました。
 まぁ、のんびりとしたいいお散歩日和でありました。





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