週間美術館[2004/01/12・Vol.02 RENOIR]




芸術が愛らしいものであってなぜいけないんだ?


  見出しに続く言葉は、「世の中は不愉快なことだらけじゃないか」である。いかにも、ルノアールらしい言葉である。彼は、1841年にフランスのリモージュと言うところに生まれる。13歳で陶磁器の絵付け見習いとなり、20歳の時に画家を目指しグレールのアトリエに入門する。そのころから、モネやシスレーと親交を深めたという。晩年は南仏でリューマチの治療をしながら、自由にならない指に筆を縛り付け大好きな絵を描いた。78歳で肺炎により、その人生の幕を閉じる。その間、彼は、「幸せに満ちあふれた絵」を描き続けるのである。
 さてその作風であるが、とにかく「甘く、優しく、柔らかい」。ほとんどが人物画である。そして、ルノアールの絵が嫌いだという人を聞いたことがない。逆に言えば、それだけインパクトがないのかもしれない。でも、それは目で見ているからであって、心で観てみよう、感じてみよう。その優しさに包まれるとき、人生の幸せだけを抽出し続けた画家の心が、そしていかに人間が好きだったかがわかるのではあるまいか。