気ままな雑文[2004/06/12・Vol.02 アメリカの香り]



ゴスペルと分厚いステーキ...

 さて、前回のPETで思い出すのは、マスターのJAZZ好きと英語のカラオケだ。もちろん日本の歌もいっぱい歌ったが、何曲か英語の歌も歌った。その一つに「愛さずにいられない」と言う先日亡くなったレイ・チャールズの歌がある。
《I Can't Stop Loving You...》で始まる歌は、40代以降の方はよくご存じだろう。レイ・チャールズは、「GEORGIA ON MY MIND」や「愛しのエリー」のカバーでも有名だ。当時二十歳前後の僕には、そういったアメリカの香りが新鮮だった。
 その頃の僕は、車で外回りのバイトをしながら夜学に通っていた。苦学生と言うほどのものではなかったが、やはり家にお金はあまりなかったのだろう。公立大学へ入れたのは、親孝行だったのかもしれない。日々外回りなので、お昼はほとんど外食だった。高校まではお弁当や学食ばかりで、外食というのは新たな体験だった。そして、お気に入りになったのは「ジョンブル」と言うステーキハウスだった。確かランチが\880だった気がする。その「ジョンブルステーキ」は、肉の厚さが2cmくらいあった。いわゆる霜降りではなくて、肉の塊なのだ。かといって決して固くなく、大根おろしを使った和風のソースが絶妙であった。それまで薄っぺらな肉しか見たことも食べたこともない僕には、正にアメリカの香りであった。
 PETもジョンブルも狛江にあったが、今はすでにない。狛江は僕にとって一つの時代であったが、今は遠い昔である。そしてその時代にも、狛江にも、もう行くことはないのだろう。そう考えると、人生もぼちぼち下り坂に入ってきたのだな。これからは新しいものの発見よりも、過去への郷愁や整理が多くなるのだろう。別に感傷的になるわけではないが、過ぎゆく時を感じる今日この頃であった。そして、《I Can't Stop Loving You...》と心の中で歌うのだ。