彼と彼女の Pale Ale [2006/07/01・Vol.03 砂浜]



波が寄せる、きみの素足がにげる...

 ゆっくり飲むはずだったビールは、きみが飲み干した。
もう一本頼もうかと思ったが、その前にきみと二人で砂浜を歩きたくなった。
そっと手をのばすと、サンダルを脱いだきみは、すり抜けるように浜辺に降りた。
僕は、肩すかしを食らったような右手を引っ込め、きみを追いかける。ばつの悪い苦笑いも、引っ込めて。

 まだ、泳ぐには早いだろう。
僕も靴を脱いで、きみを波打ち際に追いつめる。
波が寄せる。はしゃいで、素足のきみは波から逃げる。
僕からも、逃げる。つまえて、抱きしめて、そう思うけど、きみはつかまらない。
夢の中のように、くるくる回ってきみは逃げる。
追いかけることに疲れた僕はテラスに戻り、ビールを注文する。

 ひとしきり波と戯れたきみは、また僕のグラスでビールを飲み干す。まるで、僕をからかうように、ためすように。
僕もひるんではいられない。
きみの手首を軽く握って、引き寄せる。
そのまま抱きしめて、キスをしようか。