高橋克彦[2003/09/28・Vol.06 北斎殺人事件]





小布施を旅する...


 さて本来は、絵の大きさがまったく違う。上の『八方睨み鳳凰図』は、なんとたたみ21畳分もあるという。この絵を見ることができるのは、長野県は小布施にある「岩松院」。本堂の天井に北斎が描いたのは、89歳で、そしてこの絵を見るのは寝転がってである。そうでないと、全体を俯瞰することができない。
 一方、下の『男浪』は1.3m四方で、北斎館の祭り屋台の天井に描かれている。実に20倍は上の鳳凰のほうが大きいのである。ちなみに、岩松院の本堂の脇には、俳人小林一茶が「やせ蛙まけるな一茶これにあり」を詠んだ池がある。
 また、高井鴻山(たかい・こうざん)記念館と言うのもある。高井鴻山は江戸末期の豪農・豪商で、儒学・漢学・蘭学を学び、詩歌・絵画・書などにも優れた文化人である。高橋克彦の『北斎殺人事件』では、この高井鴻山を北斎が隠密として監視していたのではないかと言う視点からミステリーが構成されている。このあたりの筋立ては確かにすばらしい。しかし、高橋エンターテイメントのすばらしさはそれだけでなく、日本のあちこちを小説の中で旅できること、写楽・北斎・広重などの浮世絵の造詣の深さ、いくつもの事柄が折り重なって魅力をましている。まぁ、本人の写真は見ない方がいいと思うが(余談!)。
 高橋克彦の小説を読むと、そこに出てくる地方へ行ってみたくなる。まだまだ、日本を旅しなくては。外国へなんて行っていられない。と思いながら、今は○○○ヨーロッパの仕事をしている。さてさて、今度はどこへ空想旅行をしてみようか。