五木寛之[2002/07/27・Vol.13 戒厳令の夜]



その年、4人のパブロが死んだ...

 パブロ・ピカソ(1973年4月8日没)、パブロ・ネルーダ(1973年9月23日没)、パブロ・カザルス(1973年10月22日没)、パブロ・ロペス(1973年11月3日没)、その年4人のパブロが死んだ。

 ピカソと言えば、知らない人はまずいないだろう。美術界の巨人である。ネルーダは、知らない人もいるかも知れない。南米チリの詩人である。カザルスは、鳥の歌で有名なチェロ奏者だ。そして、ロペス。知らない人の方が多いだろう。
 ある意味、この小説の主人公はパブロ・ロペスである。また、アジェンデは、合法的・平和的にチリを社会主義へ移行した選挙で選ばれた大統領である。
 しかし、1973年9月の軍事クーデターで政権は崩壊した。これは、資本主義と社会主義の陰の戦争でもあった。
「サンチャゴは雨」は有名だ。これだけを聞いてピント来る人は、それなりの年齢だろうが。

 これらを背景として描かれたのが、『戒厳令の夜』と言う小説である。そして、パブロ・ロペスは画家という設定だ。スペインの地方画家で、上の写真の3人がこぞって尊敬する画家である。
しかし、第2次大戦中にナチスに絵画は押収されてしまう。その絵が、なんと九州の炭坑で発見されるというストーリーであるが、大きな流れとして、「ゴッホ殺人事件」とにている。
 それぞれに楽しめるのだから、それはそれでいいのだろう。
しかし、私はこの小説で一気に五木寛之が好きになった。
この小説を何度読んだことだろう。
今度、博多に「ベラ」と言うバーを探しに行こうか...



Data:水中花(昭和51年12月新潮社刊)
新潮文庫「い-15-9,10」、昭和55年3月25日発行
昭和55年→1976年